人には言えない小説

どろどろの色欲にまみれつつ、どこまで平然とした顔が出来るか見ものですね。
ジキルとハイドが如く、その微妙なバランスを保つことって美しくないですか?

#10

「ちょっとー、家こっちでいいの?」

「んー?・・・あぁ・・」

「もうっ、しっかりしなさいよ、いい加減!」


私もかなり飲んでいたが、彼はというと、もうふらふらであった。

組みたくもない腕を組み、確か家はこっちだったはずと記憶を呼び起こしながら、家まで連れて行った。


「あれー。」

歩いているうちに、やっと目を覚ました彼は言った。


「俺んち、もうここじゃないよー。」

「・・・。」


怒りが殺意に変わった。


確かに、あれからもう数年経っているけれども。

確認しなかった私が悪かったけれども。

私は勝手に帰ればよかった話だけれども。


感謝の言葉も、謝罪の言葉もない彼をやっぱり好きになれないと思った。


「終電もうないなー。」

「・・・。ごめんてば」

「いや、俺も寝てたし、しゃーないっしょ。」

「・・・。」

「まぁいいや、ここはいろっか。」


彼の元家の近くは、ホテル街であった。いや、街というほどはないが、裏路地にはそう言った類のものはたくさんあったのである。


「う・・・ん。」

「勘違いすんなって(笑)」

「わかってるよ!もー、入るならさっさとはいろ。」


シャワーを浴びながら、こんなことなら眉毛をもっと綺麗に剃るんだったと後悔した。

こんなことなら、2年前に始めたダイエットは簡単に諦めるんじゃなかったと反省した。


お風呂場の鏡の中には、数年前と同じ、彼の隣にいるにはそぐわない容姿の私が立っていた。


お風呂場から出たら、彼はすでにベットの上で口を開けて寝ていた。


「スーツ、シワになるよ。」

「ん?あぁ・・・。脱がせて。」

「はぁ?」

そう言いながらスーツのジャケットを脱がしてあげた。


「俺もシャワー浴びるわぁ。」

「そうして。私もう寝るからね。」

「おう。」


部屋はすでに暗かったし、まだお酒が残っていたからすぐ寝付いてしまった。

彼がベッドに戻ってきた時、目が覚めた。


あえて彼のいる反対側に体と向ける。なんだか気恥ずかしかった。

彼はベッドに入ると、背を向ける私を無理やり彼の方に抱き寄せた。


片手で強引に彼の方に向けさせられて、ビクッと体が動く。

目を開けるのが怖かった。


そしてそのまま彼は、無理やり私の口の中に彼の指を押し入れた。


「はうっ、ふぁ・・・。」

私の口の中で長い指が、強引に私の舌を弄ぶ。

そして、私はその指に舌を絡ませながらなめあげていた。


彼の匂いがする指。


唾液がこみあげてきて、すぐに3本のゆびを濡らした。


そのうち彼は我慢できなくなったのか、私の頭を彼の下の方に押さえつけた。

この人はいつも強引なんだ。

でも、普段の優しい彼とのギャップに私はハマってしまっているんだろう。


言われるがまま、口に含んだ。

彼は私の頭をもって、それを喉の奥まで咥えさせようとする。

涙目になりながら、それに従い、なぜかどうしようもない快感が私を襲う。


そう、前もそうだった。

苦しいのにどうしようもなく気持ちよくて、どうにかなりそうになってしまいそうだ。


彼は今度は急に私の足を持ち、私の体を逆さまに自分の上に乗せた。


「え?え?どうしたらいい?」

「そのまま。なめて」


慌てる私をよそに、彼は今度は優しい手つきで私の体を触ってきた。

「んんっ」


「そろそろいい?」

「う・・・ん・・。」


膝立ちで二人向き合いながら、彼は私の下着を脱がした。

「なん・・か、はずか・・・しい・・・。」


そう言う私を、彼はクスッと笑った。

そしてそのあとは二人とも何も言わなかった。


先ほどまでの彼とは違い、優しく抱きしめながらゆっくりしてくれた。

ビクビクと体を動かす私の体に優しくキスをした。


そのあとはもう何も考えられなかった。

私の喘ぎ声と彼の荒い息遣いだけが部屋に響いていた。


「俺もイッていい?」

「うん、イッて。私でイッて・・・。」



そして二人は何事もなかったように、次の日は近くのうどん屋で朝ごはんを済ませ、仕事に間に合うようにお互いの家路についた。



そう、昔と同じように。

×

非ログインユーザーとして返信する