人には言えない小説

どろどろの色欲にまみれつつ、どこまで平然とした顔が出来るか見ものですね。
ジキルとハイドが如く、その微妙なバランスを保つことって美しくないですか?

#6

「どMな女の仔探してます。」

「一緒に気持ちよくなりませんか?」

「今夜20:00に新宿で。」


仕事帰りの電車の中、椿こと私は、新たな出会いを探していた。


一週間前に出会った人とはまだ連絡は取っている。

だが、その人とは仕事が忙しくて会えないのだ。


「本当はあの人とできたら満足なんだけど・・・。」


私たちの体の相性は既に実証済みである。

でも、私はこの体のうちに秘めるドロドロとして色欲を

誰かと発散させないといけない。


それがこのストレス社会で働く女性としての私を守る唯一の手だった。


上司からの叱責

先輩からの陰口やいびり

初めは同じだったくせにどんどん前へと進む同僚

性格もよくて仕事もできる後輩


自由気ままなバックパッカーを経験する親友

個人経営の店を開いて夢を実現した友達

私には絶対入社できないような会社で実力を上げる同級生


汚いものも美しいものも

まとめてみんな煙となって私を取りかこみ責め立ててくるのだ


なぜうまくいかぬ

今までの努力は

才能の差

私はまだ頑張れるはず


プレッシャーというか希望というか絶望というか焦燥感というか

それはもう言葉ではないのだ


その中で私はいつも通り派手でもない地味でもない化粧をし

文句を言われない程度にトレンドを取り入れた服に身を包み

ピンクの口紅で奮い立たすように笑顔を作る


そんなこと何でもないですよ

私まだまだ伸びしろあります、頑張れます

本当にみなさん素晴らしくて恐縮です


少し太めの困り眉が謙虚に見せてくれる

パールの効いた涙袋に馬鹿な男は騙される


そう、全ては生きる術なのだから・・・。



「ソフトなSMに興味はありませんか? もしよかったら・・・・」


文章も馬鹿っぽくないし、顔もまぁ悪くない。


昨日今日は特に忙しい上にストレスフルだった。


激しいのに挑戦するのもいいかも。


そんな軽い気持ちでスマホのキーを押す。


「私でよければ。」


知らない人に会い、まだ知らないことをする。

それだけで私の心はなぜか少女のように高鳴った。

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